このコンテンツでは、
長拳の8つの要素(以下、長拳八要素)をざっくり紹介します。
長拳八要素は、長拳という拳法の要点で、
内容は武術三原則の要点を細分化したものです。
あなたがなにか別なスポーツをやっているのなら、
自分の動きを振り返って細かく点検する役に立つかもしれません。
点検するなら一度に一つの項目にしましょう。
こんなもん一度に全部あれこれ考えながら動いている人いませんから。
(頭も体もフリーズしますよ)
あくまで武術三原則に含まれる補足程度の認識で結構です。
長拳八要素って何?
「長拳八要素」は長拳に求められるの8つのポイント。
- 姿勢
- 方法
- 身法
- 眼法
- 精神
- 勁力
- 呼吸
- 節奏
1、姿勢
体の状態。
動いている時も、止まっている時も、跳んでいる時も、体まっすぐ。
基本姿勢は、かるくアゴ引いて頭まっすぐ、体まっすぐ。
肩を沈めて胸を張る。
下腹部に力を入れる(気沈丹田)。
腕や脚はのびのびとしてるけど力強く。
足の形(歩型)が安定している。
身体が歪んでいて能力を発揮できるスポーツってあるんでしょうか?
黒豆仙人は知りません。
姿勢って大事大事言われるけど、
自分の習慣や心境、環境によって簡単に変わるので、どんな分野でも逐一チェックです。
2、方法
方法は、具体的な技術や理論。
武術でいうと、突く、蹴る、投げ、関節技などのテクニックのこと。
長拳だと、攻防の表現。
例えば突き(冲拳)なら、
拳の形から拳の運び、打ち方など方法。
(方法は、武術三原則の姿勢に属する)
バスケットボールでいうなら、たとえばシュートの打ち方。
バランスのとれたスタンスから、
意識をゴールに向ける、
フォロースルー(腕を伸ばす、手首のスナップをきかせる)など、
具体的なやり方、方法論。
ダメなやり方をナンボやってもダメ。
数かけても成果につながらないなら、方法を疑うべし。
3、身法
胴体の動き。
小手先だと力も弱いし動きも小さく硬くなるから、
腰、胴体を動かすこと。
身法には、
胸の開閉、腰や胴をねじる、屈む、反らす、伸ばすなどがある。
身法は根幹の動きなので、
拳脚や体当りなどの攻撃、投げ、移動にかかわる重要な技術。
(身法は、武術三原則の姿勢に属する)
胴体から発する力はとても強力です。
「あいつ、天才だな!?」
って言われる動きのいい選手は、例外なく身法ができてます。
下手な人は胴体部の動かし方がわかってないので、
小手先しか動かず、十分に持てる力を発揮できません。
テニスや卓球などで、
ストロークの際に胴体が硬い、使えてない人は、
カンフーの基本功などで身法を練習すると使えるようになるはずです。
4、眼法
広く遠く正面を見る。
緊張や怒り、不安などの心は目に表れる。
逆に目の使い方が正しければ心を正すこともできる。
長拳でいうと、動きの手順があっていても、
目線が下がったり、よそ見すると姿勢が歪み、
崩れ、パフォーマンスが低下する。
長拳は単純に目線だけの意味だが、
武術三原則においては、捉え方、意識の向け方の意味を含む。
眼法は、対人競技では特に見直すべき項目。
たとえばサッカー。
人間は凝視すると、呼吸が停滞し、姿勢が歪むので、
運動能力と判断力が著しく低下します。
時々サッカーをやっている人で、うつむいてボールばかり見つめている人がいるが、
そういう人はボールに心を奪われやすく、フェイントにひっかかりやすいです。
ボールを凝視すると常に下を向いた不自然な姿勢になり、
よけいな緊張状態が長く続くために、凝視の癖のある人は身体が硬くなる傾向があります。
5、精神
武術の精神は、勇敢。
自分と向き合い、恐れを知ること。
キツすぎず、だらけすぎず、ほどよく快適な状態。(日本武道でいう平常心)
長拳で型演武(表演)している時は、真剣に。
(精神は武術三原則の呼吸、姿勢、眼法のいずれにも関係あるがしいて言うなら眼法)
前へ前へと進んでいく、踏み出す一歩の勇気。
これはどんな競技でも必要でしょう。
失敗を恐れ、他人の評価に怯え、積極的なプレイができない。
「シュートを外すのがこわい」
部活のサッカーでフォワードを務めていた中学生の生徒から、
そんな相談を受けたこともあります。
僕は内観(自己観察)をすすめて一緒にやってたら、
恐怖を克服できたようです。
6、勁力
勁力(けいりょく)とは、集中した力。
合成してできる力のことで、全身の関節が協調して生まれる力や、
位置エネルギーの利用など、一点集中させてできた力が勁力。
力の合成。
長拳だとバネやらムチのような力の表現が良いと評価される。
ちなみにマンガなんかに出てくる「発勁(はっけい)」は、
集中した力を発すること。
「寸勁(すんけい)」は一寸(3,3センチくらい)の距離から発勁。
(武術三原則では、勁力は全部関係しているけど、主に呼吸に属する)
瞬発力が必要とされるような競技では、勁力は重要でしょう。
サッカーやっている生徒がドリブルで僕を抜こうとしますが、
僕は勁力を用いてボールをキックしますので、
相手が反応できないうちにボールを奪えます。
生徒曰く、
「先生みたいな動きしてくる奴、他におらんし」
だそうです。
僕はサッカーが専門でないので、
ボールコントロールはわかりませんが、
タメのないシュートやパスが可能になるはずです。
バスケットでも同様です。
相手のボールを叩き落とすのも、パスにも使えます。(実証済み)
7、呼吸
すべては呼吸。
呼吸で身体の動き、人との連携や操作などをコントロールする最重要事項。
もっぺんいうけど、呼吸が一番大事。
長拳でいうと、
スピードを高めたり、遅くしたり、立つしゃがむ止まる、跳ぶ、リズム変える……。
とにかく動きにぜーーんぶ関係がある。
呼吸を意識することで、心身の疲労軽減したり、バランスを調整できる。
武術三原則、世に存在するあらゆるものの始まりと終わり、それが呼吸。
スポーツで呼吸の重要性を認識していない人は、致命的でしょう。
スポーツ経験者でも呼吸が大事とまでは漠然と知っていても、
具体的にそれが何の役にどこまで立っているのか、
なぜ重要なのかを心底、痛感して実践している人は少ないと思います。
個人のフィジカルな側面だけを切り取ってみても、
呼吸は、リズム、協調性、運動の最適化、と、
もたらしてくれる恩恵はたくさんあります。
繰り返しますが、呼吸は最重要チェック項目です。
8、節奏
節奏(せっそう)つまり、リズム。
長拳でいうと、
単に速いばっかりでなくて、
ゆっくりしたり、止まってみたりする動きのメリハリ。
緩急をつけること。
(武術三原則でリズムは呼吸に属する)
リズムというと、ダンスが思い浮かぶかもしれませんが、
対人競技や団体競技などでも大事な要素だと思います。
動きの緩急なので瞬発力も呼吸が大きく関係があり、
また対人的には、動きの調子を合わせたり、
あるいは意図的に狂わしたり、
というのも呼吸のリズムでコントロールできます。
まとめ
- 迷ったら呼吸にかえれ
- 姿勢は勇敢であれ
- 広くも細かくも見られる眼をもて
以上、黒豆仙人流に長拳八要素について解説してみました。
8つの要素は、それぞれ独立しているわけではなく、
相互に影響し合っています。
それで、点検する時は一つにしましょう。
いや、そもそもこんな8つも覚えられん
って人は、武術三原則を頭に入れておけば間違いありません。
なぜなら呼吸は、
勁力と節奏を含み、姿勢には方法や身法、眼法には精神が属しています。
ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます。
次回、お楽しみに。